多くのサラリーパーソンは「なんでこんなに給料が安いのか」と思っているが、経営者は「なぜ高い給料を払わないといけないのか」と思っている。このギャップは、サラリーパーソン無知によるものだ。高い報酬を要されても、経営者がやむなしと納得できるのはどんな人材なのか。ハッキリさせておこう。

■30万円稼げばいいわけじゃない

「給与が少ない」と、とかく社員はぼやく。自分の給与について額面(税社会保険料などが控除される前)ではなく、税社会保険料などが引かれた手取り額が、給与だと誤解している人がいる。残念ながらこうした社員は、経営者から評価は受けることはないだろう。企業が社員のために負担しているのは、給与だけではないことを知らずにいるからだ。

企業は、社会保険料(社員の額給与の15程度を会社が負担)、将来支払いが発生する退職の積み立て、福利厚生費、オフィス賃、広告宣伝・ホームページ制作更新に代表される顧客の獲得やPRの費用、機械設備の購入費用や修理費用、パソコンプリンターなどオフィス機器の経費、社用車両経費や燃料代、通信費、事務所で使う事務用品などの消耗品など数多くの経費を負担している。

■経理や人事のコストもかかってくる

企業では、1人でビジネスを動かすことは不可能だから、総務や経理などの内勤業務の人材も欠かせない。こうした人たちの給与も、経費として必要になる。企業が負担する経費をすべて含めて計算すると、給与の約1.5~2倍の費用が必要になる。30万円の給与を受け取っている社員であれば、毎45万円~60万円の経費が必要になる。

また多くの企業は、商品を仕入れることが必要だ。たとえば、販売価格が100円の商品を売るときに、70円で仕入れた場合には、「100円(売値)-70円(原価)→30円」の利益になる。この場合、粗利益率は30となる。仮に粗利益率30の商品を売る企業の場合、社員1人当たり30万円のコストが必要であれば、30万円÷30100万円 となり、社員1人当たり100万円の利益(売上額ではない)を捻出する必要がある。

1つの安だが、年俸が400万円の人の場合、会社が給与以外に負担している経費は約1.5倍、粗利益率が30だとすると、(400万円×1.5)÷302000万円もの「利益」を捻出する必要があることになる。この計算をした上で、それでも自分の給与や年俸が低いと言える人がどれだけ存在するだろう。

■年収1000万円は、手取り700万円

プロスポーツ選手の契約が更され、高額な年俸が報道されると、その額を聞いてうらやましく思う人は多い。また人材紹介会社などは「1000万円プレーヤー」などといったうたい文句を広告に使う。年俸の額面に対して、税社会保険料などを差し引くと、手取り額がどれだけになるかを知っている人は少ない。


諸条件によって額は変わってくるが、ざっくり年収と手取り額の関係を挙げると、600万なら440万円、1000万なら700万円、1500万なら970万円、2000万なら1250万円、3000万なら1750万円、といったところだ。3000万円では、4割以上を引かれる。

日本サラリーパーソンは自分で税の申告を行わず、会社が代行してくれる。そのため、税社会保険料の自己負担額を意識せずに暮らしている。高額な年俸を得ている人の話を聞くと、額面額がそのまま手取り額だと錯覚する人が出てくるのには、こうした背景がある。高額な年俸額に見えても、実際の手取り額は、思ったほど多くない。これが日本の実態だ。

■中小企業経営者は、年収を低く抑えている場合も

リスクを取って事業を起こし、ベンチャーの経営者やオーナー経営者が成功した見返りとして、それなりの報酬を得るのは当然だ。アメリカの場合は、グーグルCEOサンダーピチャイ氏の年俸はおよそ210億円、ディスカバリー・コミュニケーションズ(ディスカバリーチャンネルなどケーブルテレビ向け専門チャンネルを数多く運営するアメリカメディア関連企業)CEOのデイビット・ザスラフ氏は約165億円。GoPro(ゴープロ)創業者のニックウッドマン氏は約81億7400万円と、日本企業の経営者とは桁外れの報酬を得ている(データは、2014年米国会社四季報から引用)。


東京商工リサーチが2018年3月期決算で有価券報告書が出ていた企業2421社を対に調したところ、報酬が1億円以上の役員を開示した上場企業240社、人数は538人だった。これはあくまで大企業であり、その多くはオーナー経営者や創業者ではない。

中堅中小企業の創業者やオーナー経営者はこうした動きには冷ややかだ。事実中堅中小企業では、経営者は自分の年俸額を低く抑え、会社に利益が残るようにする人が多い。年俸を増やせば企業の負担は増える一方だが、手取り額は増えないので、闇に年俸を多くしても意味がないと考える経営者が多い。会社の自己資を増やし、経営基盤を磐石にしようとする姿勢がそこにある。

■社員に働かせて、社長はいいよな……

も実も兼ね備えたビジネスパーソンなら、それなりの報酬がほしいと考えて当然だ。自分の年俸を負担するために必要な利益を、生みだせる人なら、高額な年俸を要してもよい。だが、企業が雇用する社員はその人だけではない。組織がめているのは、企業全体の高収益体制に貢献できる人材だ。

「経営者は高額な年俸をもらっていて、いい身分だ」「社員に働かせて、社長はいいよな」などと口にする人をしばしば見かける。もし本当にそう思っているなら、自身でも「収益を上げる仕組み」をつくり上げればいい。経営者が自らに課している義務や責任を踏まえたうえで、モノをいうべきだ。

サラリーパーソンには「給与は会社からもらうもの」だと考えている人が多いが、本来「報酬とは自らの手で稼ぎ出すもの」だ。サラリーマンを辞めて、自営業やフリーランスになった人たちは、会社勤めをしていたときにもらっていた給与の額を、自で稼ぎ出すことがいかに大変かということにすぐに気づく。しかも、事業の場合、売り上げた額に対して、後から税が追いかけてくる。

■高額の報酬を受け取れる人の条件

企業に雇用されている人と経営者との間の溝は、こうした認識の違いから生まれる。企業から認められ、チャンスをものにした高収入サラリーパーソンは、企業コストと自身の年俸との関係を踏まえたうえで、結果を出している人たちだ。高額な報酬を望むなら、それなりの結果を出せばいい。

また、事業を起こした人は、「社会める価値を提供しながら、収益を上げる仕組み」をつくり、人やシステムなどに必要な経費を捻出したうえで、自分の報酬を決めればいい。もちろん、サラリーパーソンと違って、経費も自身の年俸も自分の手で稼ぎ出さなければならない。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/Deagreez)


(出典 news.nicovideo.jp)


<このニュースへのネットの反応>

【給料が安いって嘆く『サラリーマン』は、とりあえずこれ見とけ!!!】の続きを読む